wakisaka lab@Shizuoka Institute of Science and Technology

静岡理工科大学 建築学科 脇坂圭一研究室

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20201016 2期生【読書ゼミ】

前回に引き続き、 坂牛 卓さんの著作である「建築の設計力」を題材に読書ゼミを行いました。

各章ごとに担当者がレビューし、各々の意見を出し合い、本についての理解を深めていきます。

 

以下は今回の議事録になります。

 

■第2章 (担当:廣岡 歩)

 

○第二章 課題を見つける力 

 ・建築において課題を見つけることで、そのプロジェクトが抽象の段階から具体へ

  ステップアップする。 

 ・課題を見つけ出すには環境とプログラムに注目する。 

 ・紡がれた理念という抽象的な像とプロジェクトの具体的な課題が重なることで、建

  築の理念が出る。 

 

環境・プログラムを問う 

 ・環境とプログラムの幅広い検討項目の中に新たな建築を生み出す多くの問い(環境

  では地盤や敷地などの地形環境や降水量などの温熱水環境、プログラムでは用途や

  予算など)が含まれている。 

 

社会の意識につなげる 

 ・課題を見つけるという行為は多様な項目の重要性にヒエラルキーを与える。 

 ・問いを与えられた環境やプログラムの内容に限定せず、社会問題意識につなげる

  要がある。 

 

4-1感情を問う 

 ・哲学では現在、物事の判断基準としての理性への信頼が希薄化している。 

 ・ビジネス界では倫理性に対して感性が意思決定に重要であるという認識が生まれて

  いる。 

 ・建築界では「かわいい論争」があり、かわいい建築なるものが議論された。 

  →この感覚的思考から生まれるデザインが時代の感覚をよく表すものとなってい

   る。 

 ・ドナルド・トランプ氏などの反知性主義の政界での人気にも表れている。 

 ・理性は情動の誤った指示を制御する 

 ・正の情動価と負の情動価(情動価=感情による身体への価値) 

 ・建築家は使用者に正の情動価を知覚してもらうために設計している。 

 ・重要なのは使用者に対してどのような情動価が生み出されているか 

 

 槇文彦 ・歓びや共感、穏やかさ、静かさ 

       ・ヒューマニズム多くの人が歓び共感し人間性のあり方を求める状態 

 堀部安嗣 ・内面化された技や心の動きによって建築が産み落とされている 

        ・一般建築に見られる「作為」が少なく普通で自然 

 

 

4-2物を問う 

 ・認識論のコペルニクス的回転 

 ・人間に認識されるかどうかは物の価値とは関係ない。 

 ・素材の意匠的価値 

 ・ガラス厚を耐風圧で技術的に決定するようでは設計者失格 

  →ガラスは色や輝きを放ち建築を構成する「もの」 

 ・美は質料性に依るのではなく、形式性に依る 

 ・質料性の応用として建物が纏う被覆性へと発展→質料的被覆性へのこだわり 

 ・空間本質主義を包むものの見え方にも注意を払い、モダニズム初期の精神(ゼンパ

  ーが復活した。 

 ・「建築は被覆であり、一種の衣服であることを発見する」 

   川向正人著『近現代建築史論』 

 ・オブジェクト性 

 ・彫刻的に周囲から目立つことよりも馴染むものであるべき 

 ・物と物、物と人を同等なものとして捉える→相関主義からの脱却 

 

アイレス・マテウス ・stereotomic=魂から切り出してつくる 

            →こ発想は石を積み上げて建築をつくる西洋文化に根付い

             ている。 

 

ゴットフリート・ゼンパー ・建築の4つの要素=炉、土台、屋根、囲い(被覆) 

隈研吾 ・素材に常に改良を加えて構法を進化させる縦の系列と素材のデザインを

       違う素材に適用する横の系列を複合させながら、被覆を展開させた。 

      ・被覆は体積に対抗する道具 

アンドリュー・コバック ・反オブジェクトから再度オブジェクトへ 

 

4-3技術を問う 

 ・AIが意思決定を代替してくれる可能性 

 ・デザインを推奨してくるAIのプログラムをつくるかAIの推奨を上手に使いこなす 

 ・大きな概念をデザインする建築家、与えられた概念を用いて条件を入れ込みデザイ

  ンする二次的建築家 

 ・本質ではない性質を生み出す気まぐれな感情を入れ込んでいくことが人に残された

  作業 

 ・どこまでAIに重要な判断を任せるかという相互関係のあり方が問われる。 

 

豊田啓介 ・通常の設計スタッフの立場は、AIの飼育係や調教師などの立場にな

        る。 

       ・AIはいつかそれが建築界をけん引すると考えている。 

小渕祐介 ・日本のコンピューターによる研究が遅れている理由 

        →日本は設計図に不備があっても現場でそれ以上のものを作る技術が

         あり、職人の腕が設計をカバーしている。 

 

4-4共同性を問う 

 ・共同性と公共性、善と正義、グローバリズムローカリズム 

 ・限界費用0の基礎となる協働型コモンズは資本主義の欠点を補いつつある。 

 ・ネット上のコモンズで十分成立し、その場にしかないものを求めて人が集まる場所

  は建築として残る。 

 劇場やホールなどの施設でも様々な用途への転用性を保持しながらつくられてい

  る。 

 ・連帯(=ある地域の文化の中でのみ適用する真理を求める姿勢)は、割り切れない

  地方性をすくい取りその場所ごとでの幸せを求めていく上では実利的な考え 

 ・コワーキングスペースという考えは、場所の連帯が地域の連帯へと広がる可能性

  ある。 

 

ヨコミゾマコト ・地域とはかなり小さな単位で遺伝子には差があり、それを読み

           取っていく必要がある。 

          ・「地域文化遺伝子」→地域の遺伝子を分散させるのか、集中させる

                        か

 

【考察】 

 課題見つける力を養うためには、四つの要素である感情、物、技術、共同性に着目し

 ていこ とで見つかると思う。しかし、どの要素にも言えることだが時代の流れや風潮

 をアンテナ高く しながら読み取らないといけないと思う。いまからの建築には多種多

 様な能力が望まれる時代 になるのかもしれない。 

 

 

【レビュー】

 脇坂 第二章の課題を見つける力の考察について 

 廣岡 時代によって課題が変化していく。今とは全く異なった建築がこれから主流に

    なっていくのではないか。感情・技術・共同性を社会に繋げていく必要があ

    る。 

 

 脇坂 共同性と公共性の違いについて 

 葉大 公共性は国単位、共同性は地域単位で一緒に物事を作り上げていくもの。共同

    性は、参加型なのではないかと思う。 

 

 脇坂 「地域文化遺伝子」とは何か 

 廣岡 地域の持つそれぞれの文化性の核であり、それを読み取る。 

 脇坂 分散型か集中型どちらだろうか 

 結梨 分散型で、文化性というものを分散することで人がある地域に集まり、また次

    の地域へと移動していき、それぞれの地域文化をその地で知ることができる。 

 山本 集中型で、一つの場所にそれぞれの文化を集めることで人も集まり、地域文化

    を知ることができる。 

 

【ポイント 】

 本に出てきた人物の作品や、参考文献を見るとよい 

 共同性と公共性など図式化してみるとわかりやすくまとめることができる 

 色々な人の意見を取り入れながらまとめる力が大切になる