wakisaka lab@Shizuoka Institute of Science and Technology

静岡理工科大学 建築学科 脇坂圭一研究室

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20201102  建築の設計力 【読書ゼミ】

こんにちは。

だんだんと冬の色が濃くなってきてコートが手放せなくなってきました。秋から冬になったと感じています。

 

11月2日は読書ゼミを行い、引き続き坂牛卓さんの「建築の設計力」を読みこみレビューを行いました。

今回の範囲は 第3章5~7 です。

 

 

以下はレジュメになります。

 

担当者(矢作)

第 3 章 5 答えを作るための基礎

設計をするうえで考えなければならない項目を3つの軸(質料性、形式性、関係性)という 3 つの軸を設定している。

質料性

質料性とは素材の事である。それは1肌理、2色、透明性。この3つは建築の素材を意匠的に判断するときの重要な基準である。肌理とは物の表面の粗度を表す。例えばガラスやレンガ表面の性質や状態。色で重要なのは有彩色か無彩色(白、灰色、黒)であるか。透明性とは、素材の透明性(ガラスなど)。

形式性

建築の形式性を考えたときに、この問題を形状と大きさに分けて考えている。

形状を建築的に考えるならば、建築にはデフォルトな形がある。それは家具、配置、部屋の有効利用を考えると、垂直、方形をしている。つまり建築形状のデフォルトは断面的、平面的にも直角に交わる直線で構成されているものである。その対極の形状として、斜めや曲線があり、そのちらかによって建築形

 は異なる。大きさの問題は造形美術とは異なり、サイズの違いにより、見るに直接的に大きな影響

 与える可能性を持っている。大きさが建築に崇高(巨大な物、勇壮なものに対して抱く感情)という感覚、

小さは、特殊な性能と雰囲気を与える。関係性

階層的関係性。建築は、その殻だけで成立するものはほとんどなく、家具、備品が入り人が使う。周辺環

 に発生する関係周辺との協調独立性の項目。これらの過程を積み重ねながら設計は進められていく。答えを作るうえで必要最低限の事である。

 

考察

この3つの軸は建築を設計するうえでの項目と言える。細かなディテールで多くの範囲を計画設計しなければならなくて、それは必要最低限の事である。

 

第3章 6 窓をつくる

窓は人と人、人と物、物と物をつなぐ要素であり、内部環境に重要な光、風を取り入れる道具でもある。いくつかの作品にどのような課題を見つけ、答えを導きだしたのか説明していく。

連窓の家(2001)

東京 23 区に建つ二世帯住宅。南北に隣家が迫り東西に空き地と農地。

これらの空間をどう使うかを第一課題と考えた。(環境)次に 7 人が住む家の部屋の分節を考え、親夫婦は健康上一階での生活が決まって

いた。(プログラム)これらの二つのプログラムが課題である。プライバシーや光の扱い。

 これらの課題に対して切妻の一つの全体形状(分•形状)、十字系の窓(状)、黄色いカーテン(色)、

 空間をガラスで囲む事での明るい読書空間(透明性)でそれぞれの答えを出した

 

ホタルイカ(2003)

東京神田シェフの家が2階にあるイタリアンレストラン。

敷地は 50 ㎡強、延床 90 ㎡という小さい敷地。予算のため 8 割りを使い

2 割りを使わない部分としそれをどう使うかが課題である。

 これら課題対し細い地にい建を挿しそ

 作り、眺めるために腰から下の横長連続窓とした。(包容・排他性)。そ

 してエントランスの緑のカーテン(色)、建築を一つの看板とするデザイン(協調性)それぞれの答え

 を出した

 

ジグザグルームズ(2003) 東京都心に建つ住宅

北側隣地のマンションから、室内が丸見えにならないようにする事が課題。

 そのため、窓と壁を交互にジグザグに配置をした。ガラス面を南側に配

 置した事より、陽から陽と庭楽しるプラバシー間の

 

 

大小の窓(2005)

東京 23 区内の閑静な住宅地の角地に建つ二世帯住宅。4世代7人が住

む必要面積を確保するには地上だけを利用するには面積が足りないと判断。そのため地下を使った移住環境が課題であった。

 それに対し、地下の窓を最大限確保し、地上部分はプライバシーを考

 して窓を最小限にすると言うを出した

 

第3章 7 フレームをつくる

フレームを活用する事で答えをつくったプロジェクト紹介。フレームはガラスのはまっていない内外部の三方枠、四方枠、あるいは内部のガラス窓など窓の集合を包含し、多くの構成要素を取り組んだ建築作品の総称とここでは考えている。

 

するが幼稚園(2005)

静岡県富士市の幼稚園の部分建て替えである。耐震補強、建て替え要請を

市からも受けていた。クライアントの2つの要望がある。1つの要望は連絡通路になっている機能を維持する事(プログラム)。豪雨、台風のあめによる縁側の水浸しを改善させる事である(環境)。この2つの課題をそのま

ま重要課題とした。そして、子供たちにとって、楽しい場所にすることを考えた(感情)。

側を雨から守るために、ポリカーボネートを使用し、建物全体に柔らかいテクスチャと透明感をもたらした(透明性)。縁側を単なる縁側ではなく

 て雨の日の遊び場にもなってい。トイレのブースにサザナ色を使用、遊具色の配色外部との馴染

 せた(色)。

 

リテーム東京工場(2005)

東京湾埋立地に建つリサイクル工場で、この埋め立て地はリサイク

ル工場が多く建つ地である。課題 1、接道長さが短い敷地でのリサイクル啓発活動(プログラム)。この埋立地で共同性として妥当な物であるかの検討事項(共同性)。課題 2、新しいビルディングタイプである

事の印象づける価値、海に接するため塩害の考慮である。

 啓発性のため、建物の敷地内を見る必要がある。そのめ道路側の建物をピロィー化(フレーム)

 の建物で行われているシュレディング(ズタズタに切る作業)アクティビティが物の表情として表れて

 る事。そこで室サッシュで構した。ガラスをランダに配置した。ガラス被覆したのは塩害対策

 もある。ガラス下は 4 色でランダムに塗装したセメント板で構成した。(色、肌理、透明性)

 

旧富士製氷工場(2016)

山梨県富士市吉田の使われなくなった製氷工場のリノベーションである。この建物は 3 階建てで、窓も少なく閉鎖的であった。閉鎖的な工場を開かれたコミュニティ施設で開放的にする

事が課題であった。

物理的開放、意味のある開放が求められる。

 工事中に保育園の方がこの地域で保育園を作りたいと申し出たため、そこで 1 階は保育園、の延長で 2

 階をコミュニティキッチン、3 階をまちづくNPO のオフィスとなった。

 そこで地上から 3 階までをつなぐ階段部分を視覚的に露出し、ここにトンネルのような穴を設けた(フレー

 ム)。そこに現れる鉄骨、補強ブレースは既存の建物として、建物の歴史を語るものとなった。またその場

 所の歴史、風景を継承するものとなった。(協調•独立性)。

 

 

 

考察

窓とフレームの事例は、それぞれの課題に対して軸(環境、プログラム、プライバシー)などを設定し答えを導きだしている。そのことにより、課題が明快になりさらにプラスアルファの答えをだしていた。

窓、フレームから見える景色、光、物、人には動きがあり風などもある。そこから見て感じる物は飽きがこない。つまり建築内部では感じられないような、季節感、豊かさを感じさせてくれるのではないか。