wakisaka lab@Shizuoka Institute of Science and Technology

静岡理工科大学 建築学科 脇坂圭一研究室

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読書ゼミ2022年4月5日 クリストファー・アレグザンダー「オレゴン大学の実験」レビュー

オレゴン大学の実験」

発行 1975年

著者 クリストファー・アレグザンダー

訳者 宮本雅明

解説 西川幸次

 

本書はオレゴン大学のマスタープランであり、世界中どのコミュニティでもマスタープランとして採用できるようプロセスを定めた本である。

あるコミュニティでの建設とプランニングの方法は、6つの原理に従うことで人々の要求に合致した環境作り出していける。この原理は誰でも自分のコミュニティに適応できるように手直しを施すことができる。

概要:オレゴン州ユージン郊外、学生数15000人、教員数訳3000人

(1973年時)

 

有機的秩序

有機的秩序は環境の個々の部分の要求と全体の要求との間に完璧なる均衡が存在する場所に生まれるものである。あらゆる場所は個性的で包括的な全体を作る一方、相違なる場所は協同し、放棄される場所は存在しない。そして全体は、その一部である誰もが一体感を感じられる事ができる

その中でケンブリッジ大学有機的秩序の完璧な例を示している。

このような秩序は今日では失われたとされ、どちらかが一方に優れている。さらには部分が支配して全体は失われている。

例えばかつては美しかったカリフォルニア大学のキャンパスは断片的な建築物が集まり混乱を極めている。それぞれ偏狭な課題に左右され形を取っている。そこでは街路は混雑し、サーキュレーションは混乱、全体的なキャンパスのレベルにおいて機能上の誤解が生じられる。

有機的秩序の原理

計画と施工は、全体を個別的な行為から徐々に生み出してゆくようなプロセスによって誘導される。この目的を満たすためコミュニティは、いかなる形式の物理的マスタープランも採用しないこと。かわりに、本書に述べられるようなプロセスを採用すること。そのプロセスの最も基本的な事柄は、固定された未来のマップからではなく共有のパターン・ランゲージからコミュニティ秩序を得ることにより可能となる。そのプロセスは、コミュニティを代表する十人以下のメンバーからなる一つの計画評議会によって管理されること。そのメンバーは双方ほぼ同数の利用者と管理者、そして一人の計画ディレクターから構成されること。計画ディレクターは、2000人に一人の割合でコミュニティの建設行為を指導するためのスタッフを有する。

 

Ⅱ参加

参加形式メリット

参加の形式は、大学には重要であるとされる。それは人々の連携を強め、彼らをその世界の中に包み込む。建築物の日常的な利用者は、誰よりも自分の要求を熟知している

より人間の機能に適応した場所を創造しやすい

参加形式デメリット

ほとんどの学生、教官は5年以上在籍する事はない。5年後における実際の利用者が同一であると限らない。

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しかし設計は利用者によって全て行われるのではなく、利用者からある距離を隔てた建築家によって行われる

 

オレゴン大学では音楽部の増築修繕のなかで、既存の建築物で損なわれている部分、補修が必要とされる場所更に解体修理を必要としているのかを利用者の実践的な理解、実測に基づいて設計はおこなわれた

この設計作業は既存建築を歩きながら行われ、設計は机上で作成されたものではなかった

参加者の原理

何を建築、建設すべきかの決定権は利用者の側にある事。その企画中の建築プロジェクトにはチームが存在すること。計画スタッフはパターン、診断、援助をチームメンバーに与えること。利用者の行った設計を責任もって受け入れ作業を明確に理解させること。

 

Ⅲ斬新的成長

この章では斬新的な成長と反対に大規模プロジェクトの対となる比較が述べられている。

斬新的成長

斬新的成長とはごく小さな歩調で前進してゆくような成長を意味している。なお要途と行動の変化にたいして対応するものでなければならない

優れた環境に共通している事は、長い期間を経て少しずつ緩やかに成長することにより、全体を形成し活動している。

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建築物は取り壊されたり、忘れ去られることなく、修正、復元、拡張、改善を施される。

                   ↓

                 斬新的成長

大規模プロジェクト

・補修用の僅かな資金を残しておくことをしない。

・相違なるグループ間のプロジェクト競争勝利のためプロジェクトの規模が誇張される

・大規模になるほど、利用者は十分な満足は得られない

・どの部局も数十年に一度しか建設資金を得られない

・巨大開発プロジェクトは古い中心地区をスラム化する

 

Ⅳパターン

パターンとは公式化されるものであり、課題解決に必要な特質を提供するものである。

つまりどのような要求に対しても容易に対応できる。

オレゴン大学を例として抜粋をしたものを例として下記に記す。

「開かれた大学」 大学と一般市民との間の境界線を取り除く事、大学都市共に成長できるように促進すること。

「大学街路」大学の主要機能―事務室、研究室、講義室、は大学街路に沿って連続して設ける事。新し建築物の場合大学街路の充実と拡張を常に基本として行われること。

「手にし得る緑」広い開放的な緑地の近くで働いていれば、そこをよく訪れる。

あらゆる建物から128メートル以内に設けること。

「生かされた外部空間」建築物の間に単に放置された外部空間は一般に利用されることはない。建築物、アーケード、樹木、は次から次へと眺めて歩けるように幾通りもの方式で互いに連結すること。

「学科の団欒の場」大学の学科が単なる研究室の集合体である場合、コミュニティ意識をはぐくむ機会が失われてしまい、開放的な意見交換の可能性も奪われてしまう。

したがってすべての学科は社交の場である団らんの場を設ける。その場は研究室郡の重心に、また誰もが利用する通路の脇に位置させる事。その場にはラウンジ、喫茶店、小図書館配布物棚、告知板などを設けること。

 

 

Ⅴ診断

診断とはコミュニティ全体の健康状態は変遷の中でどの時点でもどのスペースが生かされていないかを定期的な診断に基づいて保護され根ければならない。計画スタッフは定期的に診断マップを用意し、プロジェクトを提案する全ての人が手にすることができるようにしなければならない。

例として、中世のヨーロッパ自由都市国家では市民グループによって都市が築かれた。

都市では毎年担当地区ごと調査を行い、道路の拡張、舗装などが行われていた。

大学も同様に関係者がマップを作製し、良好な状態、補修が必要な状態など各パターに当てはめ、マップを作製することにより、良好な状態が保たれる。

 

Ⅵ調整

調整の原理

全体における有機的秩序の緩やかな生成は、利用者の促進する個々のプロジェクトは財政的処理によって確実なものとされること。これらのプロジェクトはすべてパターンと診断に基づいて計画評議会に提出されること。なお、異なるプロジェクトと資金獲得に競合していないか確認をしなければならない。

 

考察

この本を読み私は有機的秩序とは、居心地の良い場所であり、個々なる要素は別の特徴であるのにもあるのにも関わらず統一性があり一体感の感じられる空間であると読みといた。さらにこれらの空間はパターンから生み出すことが可能とされ、このパターンに加え、利用者の参加がより良い状態をつくる。またより良い状態を継続してゆくには要求、老朽化に応じて改修するなどしていく必要があると読み説き、このような要求、課題の変化はマップ、図面に記し基準を設け、必要に応じて資金をつぎ込むなどすることで、全体を形成していくのだと理解しました。(担当:矢作武)