wakisaka lab@Shizuoka Institute of Science and Technology

静岡理工科大学 建築学科 脇坂圭一研究室

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2021.02.05 「論文作法 第1・2章」

こんにちは。

 

2月5日 (金)は読書ゼミを行いました。

ウンベルト・エコの「論文作法」を取り上げて、読み込みを行いました。

今週から5人で分担を行いレビューを行っていきます。

 

 

今回は 山本弓貴 が担当しました。

推敲が足りず完璧に要約できなかったため、

間延びした発表となってしまったのが反省点です。

 

論文がなぜ学士を取るために必要なのか

どうやってテーマを選ぶべきなのかを学べました。

 

何に興味があって何を掘り下げていきたいのか

そしてテーマについての資料が手に入れられるのかを

今のうちからはっきりさせていきたいと思います。

 

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20210205 読書ゼミ

以下はレジュメになります。

 

 

                              担当者(山本弓貴)

「論文作法 調査・研究・執筆の技術と手順」

 著:ウンベルト・エコ 訳:谷口 勇(出版年:1991年1月25日)

 

第Ⅰ章 卒業(博士)論文とは何か。何に役立つか。

 

Ⅰ.1.なぜ論文を作成しなければならないのか。論文とは何か。

 

イタリアの決まりによれば卒業するには論文が不可欠だからである。

ここでいう論文は100ページから400ページ程度のタイプ打ち著作であり、学生は学位を取得したいと思っている研究方向に関係する問題を取り扱う。

だから、論文のレヴェルは様々であるし、大学もPhDのレヴェルの論文を要求しない。

そのため研究論文ではなく寄せ集め式論文でも立派な論文として通るのである。

 

寄せ集め論文とするか、研究論文とするかの選択は学位志願者の分別や能力、

経済的要因と結びつく。

 

筆者が望むのは

「あらゆる階層の学生たちがストレスによる犠牲にさらされることなく、大学に通えるようであって欲しい。以下,各自の特定の職業はいうまでもなく,自由になる時間や気力をも考慮した上で,相応の論文をどうやったら作成できるのか,その説明に取りかかりたい。

 

 

Ⅰ.2.本書に関心のある向きへ

 →この本に向いている人とは誰か。

 

「本書が相手にしているのは,日々研究に何時間かを割けるだけの余裕があり,かつ,ある種の知的満足をもたらし,学位取得後も約建つような論文を準備したいと思っている人たちなのである。」

「したがってまた、自らの努力に限界を目標を定めたうえで,真剣な仕事をしようと望む人をも対象にしている。」

 

Ⅰ.3.学位取得後も論文はどのように役立つか

 

論文を作成することは独特のアイデアを整頓し,資料をきちんと整理する技術に習熟することを意味する。方法論的作業。

 

論文を作成することの意味は、

(1)具体的なテーマを探し出す

(2)テーマに関する資料を収集する

(3)資料をきちんと整理する

(4)収集した資料に照らして,テーマをゼロから検討し直す

(5)先行の諸考察全体に有機的な形を付与する

(6)論文を読むものがそこにかかれている意味を理解できるように,

 またできれば,読み手が自らそのテーマを再考するために同じ資料を繙くことが

 できるようにするそれぞれの点にある。

 

即ち、テーマよりも研究方法やそこから得られる経験が重要なのである。

 

Ⅰ.4.四つの明白な心得

 

I.2.のような志願者がテーマを選ぶ心得

①そのテーマが学位志願者の興味に合致していること

②遡るべき典拠を見つけることのできるものであること。

③遡るべき典拠が扱いやすいものであること。

④研究の方法論的枠組みが学位志願者の経験の許容範囲にあること。

 

 

第Ⅱ章 テーマの選び方

 

Ⅱ.1.モノグラフ的論文か,パノラマ的論文か

・狭い範囲を厳密にとらえるのがモノグラフ的論文であり、

 広い範囲の全景をとらえるのがパノラマ的論文である。

・筆者が進めるのはモノグラフ的論文やパノラマ的論文ではなく「パノラマ的論文が厳 密にモノグラフ的なものとなることなく,しかも,誰からも受け入れられる,中庸を得た ものに,どうやって帰着させられるか」である。

 

Ⅱ.2.歴史的論文か,理論的論文か

理論的論文とは,ほかのいろいろな省察の対象ともなりえた抽象的な問題に取り組もうとする論文のことである。基本的に理論的論文は数十年に及ぶ努力の結びとして発表される。

 

学生が理論的論文を取り組む対策

①パノラマ的として定義した論文を作成させること

②無からは無しか生じないがゆえに自分は誰か他の著者の影響下に思想を練り上げねばなるまいと自覚しているとき、理論的論文から歴史的論文へと方向を変えなければならない。

 

Ⅱ.3.古典的テーマか,現代的テーマか

古典的テーマは確かな解釈格子が存在するが、

現代的テーマは解釈が一致せず、批評能力は展望を欠くため難しい。

 

 古典的テーマの方が本や文献の読み時に骨が折れるが、論文は研究の組み立て方を学ぶ好機だと考えれば古典的テーマの方が習練上の諸問題をより多く提起してくれるものだ。

 

Ⅱ.4.論文作成にはどれくらい時間がかかるか

3年以上でも,6か月以下でもない。

 

3年間研究してもテーマを絞ることができず,必要な資料収集もままならぬとなれば,

 次の3点を意味しうるに過ぎない。

 ①選んだ論題が間違っていて,自分の力を超えたものだった。

 ②いつまでもいい足りないという不満が残るような類のもので,その論題の研究には

  引き続き20年も要するもの。

  →限定を設けることができ,この限定内で何か決定的なものを生み出さなければ

   ならない。

 ③論文ノイローゼにかかった場合。これでは学位取得はおぼつかない。

 

6か月以下でないわけは、研究設定の方策を調べ,文献を探索し,資料を整理し,本文を書き上げるうちに6か月は光陰矢の如しであるからだ。

 

筆者は「大学2回生の終わりごろに論題を選ぶのが望ましい。」と述べている。

その理由は、この時期ならばすでに様々な科目に精通しており,テーマの変更などの調整が可能な時間があるからだ。

すなわち、論題の選択はあまり遅すぎないほうがいい。

その理由は、立派な論文はできる限りの範囲内で指導教員と議論しなければならないからである。指導教員は学生が自分自身の研究過程で自由に利用できる有能な読者の唯一の見本なのだ。

 

論文を6か月で解決しなければならないような場合,短期間で真剣かつ立派に取り組めるテーマを見つける必要がある。

 

6か月の論文の必要条件

1)テーマが限定されていること。

2)テーマはできれば現代のものであること。又は、ごくわずかしか書かれたことの無い

 周辺的なテーマであること。

3)あらゆる種類の資料が,限られた地域でも自由に利用でき,たやすく調べられるもので

 あること。

 

Ⅱ.5.外国語を知る必要があるか

 外国語を知る必要が出てくるのは二次的なものであり、 

「自分が知らず,また学ぶ気もない言語についての知識を要しないような論文を選ぶべし」と述べられている。

 

その理由は、

1)原語で読めないのなら,外国作家についての論文を書くことはできない。

2)取り組むテーマに関係のある最重要な著書が,我々の未知な言語で書かれているのであれば,そのテーマについての論文を作成することはできない。

3)われわれに周知の言語で書かれた著書だけを読んで,ある著者なり,あるテーマなりに

ついて論文を書くことはできない。  

 

以上より,テーマを設定する前にあらかじめ現存する文献を一瞥して言語上の近内が無いことを確かめることが必要である。

 

Ⅱ.6.科学的論文か,政治的論文か

 Ⅱ.6.1.科学性とは何か

 

科学的となる要件 

1)研究が問題にするのは,はっきり認識できる対象,しかも,他人によってもはっきりと

 認識できるように規定された対象である。

2)研究というものは,ある対象について,まだ言われなかったことを言うべきであり,

 あるいはむしろ,すでに言われたことを別の視座から再検討すべきである。

3)研究というものは他の人々に有用でなければならない。

4)研究というものは,それが提示する諸仮説を確証したり反芻したりするためのデータ を提供しなければならない。したがってまた,それはみんながそれを続行するのに

 必要なデータを提供しなければならない。

 

Ⅱ.6.2.歴史的-理論的テーマか,“ホットな”経験か

 

 自らに政治的・社会的関心がある場合はホットな経験を論文とするべきである。

 反対に自らに政治的・社会的経験が無い場合は理論的テーマが良い。

 

Ⅱ.6.3.今日的テーマを科学的テーマに変えるには

 

まず、研究の地理的・時間的範囲を正確に規定する。

見本を選ぶ基準を定める。そして研究対象を公に知らせるべきである。

データを集める。

1)公文書…最も確実な方法

2)当事者の説明…質問事項をあらゆる話題を含める必要がある。

3)聴取記録…論文の真剣な仕事かアマチュアの仕事との差である。

 

Ⅱ.7.指導教員に利用されるのを回避するには

論文のテーマ選びの時に、教員が息の長い研究を行っていてそのデータを必要としているとき,学位志願者を作業グループの一員に使おうとする場合がある。

こういう場合、欠点がいくつかある。

1)教員が自分のテーマにかかりきりになっていて、そのため、その方面に何らの関心もない学位志願者に無理強いする。かくして学生は教員の助手と化す。

2)教員がいかさまで、学生たちに作業させ、学位を与えておきながら、学生の仕事を教員自身のものであるかのように活用する。

 

論文のテーマを引き受ける際には、グループ・プロジェクトの中に組み込まれるのか否か、やりがいのあるものなのかを考えるべきである。